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噛め噛め

ちょっとだけ豊かになる短編アニメーション&映像の話

はじめに

この記事はAT2017 Advent Calendar 9日目の一環として書かれています。A&Tについては、17のモハちゃんが説明してくれてます。ありがとう。
A&T前代表 兼4年目ということで、老害ではありますが、しばしお付き合いください。

きっかけ

なぜ短編アニメーションについて書くのか。それは、僕は卒業プロジェクト(通称“卒プロ”)として短編アニメーションを作っていて、昔から好きだったこともあり、この機会にまとめてみたい!と思ったからです。

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  (↑ 卒プロとして制作した短編アニメーション《Betweener》より)

概要

短編アニメーションは、短いという点に良さがあります。忙しい時にこそ観ると、壮大な余韻を感じられるからです。いわば温泉のような効能です。しかし、(わかりづらい)といった先入観からか、短編アニメーションが日の目を見ることはあまりありません。ここでは、そんな短くも良さが凝縮された、選りすぐりの短編アニメーションをご紹介します。

まずは:今敏《オハヨウ》

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誕生日パーティ後の一室。そこに一人住む女性はアラームの音で目を覚まし、朝の支度を始める。テレビの音、飲み干す水、浴びるシャワー、それぞれの要素が女性を構成する。「パプリカ」でも知られる今敏監督の一作。朝によく観たくなります。

このあまりにも些細でプライベートな構成が、短編アニメーションならではの魅力だと思います。僕はこの作品をかつて放送されていた伝説の番組、NHK デジタル・スタジアムで知ったのですが、その際に制作時のテクニックも紹介されていて、背景の手前・奥のボケ感について取り上げられていた記憶があります。改めて、世界観は細かな箇所へのこだわりの凝縮なのだと気づかされます。

風景系:《BALLPIT》《such a good place to die》《WONDER》

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カナダのアニメーション作家・Kyle Mowat氏の《BALLPIT》。“アニメーション界のハーバード”とも称されるSheridan Collegeの卒業制作であり、四大国際アニメーション映画祭で知られるオタワ国際アニメーション映画祭においても、最優秀卒業制作賞を受賞しています。

極彩色のオブジェクトが繰り広げる動きは、初めは一つ二つ…と少なかったものの、徐々にその数を増やし、パーツとして連結し、一つの大きな有機体を構成していきます。進化論を彷彿とさせる展開と、この量感を明確に知覚させる動き。そして最後は輪廻転生のように、一つの新たなパーツに回帰する。単純にボーッと、風景として捉えて見ても気持ちがいいです。

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日本のアニメーション作家、小野ハナ氏の《such a good place to die》。僕はこの作品をTOKYO ANIMA!で初めて観て、その日観た作品の中で一番印象に残りました。夕焼けや海を思わせる、鮮やかだけれども抑えられた日本的な色彩、抽象的な線が繰り広げるメタモルフォーゼ、そしてさまざまな動きの衝突から巻き起こるクライマックス…。どの要素も美しく、どの要素も何かを明示しているわけではない。まさにタイトル通り、こんな場所で死ねるならとてつもなく良い、そんな心象風景を静かに表した一作だと思います。たまに寝る前に観たくなります。

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同じく日本のアニメーション作家、水江未来氏の《WONDER》。細胞を思わせるキャラクターが縦横無尽に駆け回り、メタモルフォーゼする、観ていて気持ちよさを感じさせるアニメーションです。初めは白い背景に単純な動きが連鎖するさまだった内容が、徐々に激しさを増し、混沌としていき、そのさまは強大なエネルギーを感じさせます。

この作品、実に1年をかけて制作されており、毎日数秒のアニメーションをアップしている様子が話題になりました。その作画枚数、計8,760枚。自分も3,465枚描いていましたが、その比じゃないぐらい圧倒的な量で、驚嘆の意にとられます。。

あとこの最後に出てくる「アニメーションの素晴らしさに目を覚まさせてくれた 片山雅博先生へ捧げる」。これを見て思わずウルッときそうになって、というのも、《つみきのいえ》で知られる加藤久仁生氏も教わっていた片山雅博先生がこの作品の作られる数年前に亡くなられてしまったんですね。お世話になった恩師一人に対し、計り知れない悲しさを乗り越えようとして、とてつもない時間と労力をかけて、一本の作品を作り上げる作者自身の姿が、この一文で目に浮かんでしまって、それに深い感動を覚えました。

動き系:《LEFT NUDE》《Dialogos》

一旦箸休め的に、肩の力抜いて観られる映像を観てみましょう。

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RCAアニメーション科卒のアニメーション作家、Peter Millard氏の《Left Nude》。本当に疲れてて温泉に行きたい、でも行けない。。。そんな状況下でよく観ています。あえて利き手とは逆の、左手で描かれた稚拙な裸体の線が、謎のオーケストラの音とともに、結合・分裂を繰り返していくアニメーション。

これを初めて観たのは、変態アニメーションナイト2014でした。前後の作品に圧倒的な力量を感じていたせいか、《Left Nude》を観た時は本当に呆気に取られて、ひどく脱力して、でも短編アニメーションてもともとそんな肩の力入れずに観るものじゃ無いんじゃ…?と教えられたようにも思います。ちなみに作者のPeter Millard氏は、RCAの先生から「お前はこんな作品を作るために、わざわざRCAに来たのか…?」と言われた逸話もあるそうです。

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エストニアのアニメーション作家、Ülo Pikkov氏によって作られた《Dialogos》。フィルムに直接スクラッチする技法、シネ・カリグラフで作られた作品です。毎シーン毎シーンが風刺を思わせる構成でありながらも、説教臭くなく、音楽的にすっと観られる感じ、そして観終わった後に後味があっさりしているこの感じ。逆に作者が何を考えて作っているのか気になりますね。。

ストーリー系:《かなしい朝ごはん》《河童の腕》《インターバル》

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日本のアニメーション作家、一瀬皓コ氏によって作られた《かなしい朝ごはん》。クマ?のような主人公が朝食を食べています。ふと鳥カゴを見ると鳥がいません。そして主人公は亡くなった友人を思い出し、鳥のことを思い出そうとする。なぜ鳥はいないのか。わずか2分半という短い時間の中で、生死、そして弱肉強食の構造を考えさせられ、しかもカートゥーン調であるためか増してその意味が深く感じられてしまいます。内容が一目見て頭に入ってくる絶妙な間、そしてストーリーの語り方、構造が本当に魅力的で、ちょくちょく観ては作品制作の参考にしています。

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日本のアニメーション作家、ひらのりょう氏によって作られた《河童の腕》。河童の腕はスポッと抜けます、というコメントにある通り、主人公が友人の河童の腕を抜いたことが発端となり、展開される作品です。さきほどの《かなしい朝ごはん》とは逆で、よくわからなさが特徴的だと思います。途中のカラフルに発光する謎の物体は何なのか、なぜ途中で母親らしき?人物の手紙が映されるのか、なぜ主人公の河童は友人の河童の頭に吸い込まれてしまうのか。その答えは観終わった今でもわかりません。でもなぜか、最後のシーンでは泣きそうになってしまう。よくわからないけれども。

作者のひらのさんいわく、イゴール・コヴァリョフの作品に影響を受けたと語っています。これもまた、一見よくわからないけれどもリアリティある断片の組み合わせでできていて、でも最後の謎のフォークソングがかかると、あぁなんだかんだあったかい作品だったな、という印象になるから不思議です。最近僕も友人と、どうでもよさに良さを感じること、そしてそのどうでもよさのポイントが共通していることが時代を反映しているしおもしろいのではないか、という話をよくするんですが、まさにそのどうでもよさに豊かさの要素が潜んでいるんじゃないかと思えます。

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なんか最近寒いので、最後にあったかくなれる作品を紹介して終わりたいと思います。

日本のアニメーション作家、佐竹真紀氏によって作られた《インターバル》。舞台は作者の故郷、北海道の母校の小学校。作者の祖父が撮りためたホームビデオから画像を一コマ一コマ印刷し、印刷した写真を手に持ち、いまの風景と重ねることで、いまと過去の風景が交差する、不思議な感覚の映像が生まれます。

「記録に残る過去の私の姿を通し、母校で記憶の再生を試みる」という一言にみられるように、記録と記憶の狭間としてのアニメーションが、故郷のあたたかな思い出とともに作られます。単純に、祖父の撮りためたホームビデオを娘が再生する行為自体がなんかわからないけれども胸にきますね。。

この作品は今から12年前、2005年に作られた作品で、実は僕が映像を作り始めたきっかけとなった作品でもあるんです。当時僕は小学六年生、休日に父親がたまたまテレビのチャンネルを回すと、NHK デジタル・スタジアムという先述の今は無き伝説の番組でこの作品が流れていました。そこで映像という表現の手段を知って、みかんがサッカーをするとか、コインが人型になるなど、他人に言ったら「は?」と言い返される想像を形にするようになったので、ちょくちょく見返しては懐かしい気持ちになります。

まとめ

というわけで、今回、僕の知る短編アニメーション&映像の中で、観るとちょっとだけ豊かになる?作品を、風景系・動き系・ストーリー系で分けて幾つかご紹介しました。いかがだったでしょうか。分類の基準が若干曖昧な気もしますが、、短編アニメーションならではの良さを少しでも共有できれば幸いです。

告知

来年 2018年1月6日(土)〜10日(水)に、駒場東大前 No.12 Galleryにて、
個展《チューニング》をやります。

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(卒業プロジェクトの一環としての展示です。)

一年間、卒業プロジェクトとして、現代社会における豊かさをテーマに制作してきたので、成果物である《Betweener》と新作《レシートの滝》を展示する予定です。

含蓄のある、考えさせられる展示にしていくべく、いま絶賛準備中です。
新年一発目の展示、是非ともお越しください!

では。よいお年を〜